大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2437号 判決 1950年3月03日

主文

原判決を破毀する。

被告人を懲役一〇月に処する。

但本判決確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

名古屋高等檢察庁金沢支部支部長檢事名越亮一の上告趣意について。

本件について、第一審富山地方裁判所出町支部においては、昭和二三年四月二七日被告人に対して窃盗の事実を認定して、懲役一〇月に処する旨の判決を言渡し、同判決に対して被告人より控訴を申立て、(檢事より控訴附帯控訴の申立なく)第二審名古屋高等裁判所金沢支部においては、昭和二四年七月二〇日同一事実を認定して被告人を懲役一年に処す、但し裁判確定の日より四年間右刑の執行を猶予する旨の判決を言渡したことは所論のとおりである。

かくのごとき場合、第一審の刑と第二審の刑といずれが、被告人にとって利益であるかを較量することは、必ずしも容易なことではないのであるけれども、旧刑訴第四〇三条は「被告人控訴ヲ為シタル事件及被告人ノ為ニ控訴ヲ為シタル事件ニ付テハ原判決ノ刑ヨリ重キ刑ヲ言渡スコトヲ得ス」と規定しているのであって、本件のごとき第二審において第一審の懲役刑よりも長い懲役刑に処したときは、たとえ右刑の執行を猶予する旨の言渡をした場合でも、同條にいわゆる「原判決ノ刑ヨリ重キ刑」を言渡したことに該当するものと解しなければならない。

從って、原判決には、右刑訴法の規定に違背した違法あり、檢事の上告は理由あるものといわなければならない。

よって、刑訴施行法第二條旧刑訴第四四七条、第四四八條に從い原判決を破毀して、原判決確定の事実に法律を適用すれば、被告人の窃盗の所為は刑法第二三五條に該当するから、その刑期範囲内において被告人を懲役一〇月に処し、尚、刑法第二五條を適用し情状により四年間右刑の執行を猶予するを相当と認め、主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例